管理手法は整理整頓になりました
コンピューターの専門家で「パソコンの運用にファイルの整理整頓が必要」と言う人はいませんでした。
しかし、皮膚感覚で現場を把握しているパソコン担当者の中には、「ファイルの整理整頓が必要」と、考える方が数多く存在しました。
そこで私達は、整理整頓がファイルの管理や共有に役立つかどうかを検証することにしました。
調査を始めると、数あるソフトメーカーのファイル管理アプリケーションは、何れもデータベース型の製品であることが分かりました。
お客様の中には、「データベース型のアプリケーションは、自分は使えても、うちの社員には使えない」と、言う方がいました。
データベース型の製品は、ファイルにタグを付けてデータベースに登録することで、検索機能を強化することができます。
ただし、その場合にはタグ付けのルールを全員が理解して遵守する必要があることから、相応のスキルのある人たちでないと、運用が難しいことがわかりました。
一般的な組織のパソコン使用者にそれを求めるのは難しいことから、私たちもパソコン担当者と同様に、「ファイルの整理整頓」という管理手法に行きついたのです。
目的に適わない道具は、労力のわりに成果が見込めない
パソコンが登場したことで、さまざまなことが出来るようになりました。
家計簿のアプリケーションを起動すると、パソコンは家計簿装置になります。
また、ワープロのアプリケーションを起動すると、パソコンはワープロになります。
アプリケーションがパソコンを介して目的を達成することを考えますと、アプリケーションは情報化時代の「道具」と言えます。
道具では、「目的に適わない道具は、労力のわりに成果が見込めない」と、いったことが起きます。
同じ木を削る道具でも、ノコギリを用いて木材の表面を滑らかにしようとしたり、カンナで木材を切断しようとしたりしても、労力のわりに成果が見込めません。
これと同じで、ファイルの整理整頓が目的なら、やはり適したアプリケーションが必要になります。
ところが、いくら探してもそのようなアプリケーションは見つかりませんでした。
どうも「パソコンの組織での運用にファイルの整理整頓が必要」という考えが、世の中には存在しないことから、そのようなアプリケーションも存在しないようでした。
それならということで、ファイルの整理整頓を目的としたファイルアプリケーションを開発したのです。
本棚の形なら直観的に使える
当初、ファイルを整理整頓するのに、どのような機能や構造が好ましいかということがテーマになりました。
従来のフォルダ型の構造では階層が複雑になり全体像の把握が難しくなることと、今どの階層にいるのかが直観的に分からなかったことから、これ等解消するために行きついたのが本棚の形だったのです。
これなら、階層は本棚と本の2階層になるので全体像が分かり易くなり、現在どの本を開いているのかも容易に分かります。
また、「本棚型なら、パソコンが苦手な方も、直感的に使えるのではないか」というところもポイントでした。
リコー様の技術力に助けられました
開発を始めると問題が浮上しました。
マーケットは「ファイルの整理整頓」の必要性を感じていないことから、一般的なマイクロソフト社のファイル周りのプログラムでは、電子本棚の仕様を満たせなかったのです。
開発を進めるには、この部分を独自に開発する必要があったのですが、それは技術的にも費用的にも負担の大きいものでした。
そんな状況下で製品化に漕ぎつけることができたのは、当時共同開発関係にあったリコーグループの中で高い技術力を保有する取技術研究所様の力をお借りすることが出来たからです。
これにより、ファイルを整理するための世界で初めてのアプリケーションを開発することができました。