ちょっとしたことで業務が効率化します

 代表の西野です。実は昔からファイルの管理がしづらいと思っていました。
 同様の話を聞くことも多かったので、ファイルを整理しやすいソフトウェアを開発しました。その製品の導入過程で、パソコンの運用の一部を見直すことで、多くの業務が効率化することに気づきました。
 ここではその経験を踏まえて、ちょっとしたアドバイスをさせていただきます。

 私はもともと共有フォルダでファイルを管理することが嫌いでした。以前にファイルが必要になった際に指定されたフォルダを探したことがあります。フォルダを開くとそこにはファイルはなく、代わりに幾つかのフォルダがあり、そこを開いてもファイルがなかったのです。
 結局、「ここには入ってない」ことを知るために、数十分かけて全てのフォルダを調べる必要があったのです。
 それ以来、私は共有フォルダを使わないことにしました。

 数年が経過して、「共有フォルダでファイルが上手く管理できない」との声を多く聞くようになりました。「そりゃ、そうでしょう」と思いましたが、しっかり管理している事例もあるはずだと、県の情報産業課に共有フォルダの運用状況を教えて貰うために伺ったことがあります。

 当時と今は違うかもしれませんが、結論から言うと、まるきり管理していませんでした。
 「場を提供をしただけで、使いたい人が使っているだけ」というもので、何処に何があるのか分かる人は、一人もいないとのことでした。
 優秀で規則を守る県職員がそうですので、民間の事業所がファイルの管理が難しいのは当然だと思いました。

 これがきっかけとなり、ファイル管理ソフトを開発することになったのですが、調査段階でファイルには数の概念があり、これが問題を難しくしていることが分かりました。
 ファイルは、従来の書類や図面が姿を変えたものですので、これらと同様に一つ、二つといった数の概念があったのです。これが原因となり、「数が多くてわからない」といった、とても電子データとは思えない問題が発生していました。

 そこで、ファイルを管理する手法を探したのですが、検索を用いた方法は、ファイルの命名規則が複雑になりそうなので実用的とは思えませんでした。書類や図面のように整理整頓する方法が有望でしたが、多くの方が共有フォルダで試されていたにも拘らず効果が上がっていないのが実情でした。

 「整理整頓が効果を発揮する理由」を考えると、使う人が整理された状態から「整理の仕方」を理解した場合に、「もの」の場所が予測できることだと分かりました。そしてこれにより、共有フォルダがファイルの整理に向いていないことも分かったのです。
 共有フォルダは、フォルダを開かないと中身が分かりません。
 そのため「整理の仕方」を一目では理解できないので、フォルダを開いた調査が必要になります。
 しかしそれでは、「容易にファイルを探すために調査が必要」となり、効率的ではなかったのです。
 それともう一つはフォルダが制限なく作れてしまうことです。整理の仕方の理解を理解するには、その全体像を知る必要があります。
 全体像の把握には「1つのフォルダをのぞいて大体は把握できた。」ということではいけません。
 そのフォルダは数千の階層と数万のフォルダにより構成されていて、重要なフィルが入っている可能性があるからでです。そのため、全てのフォルダの調査が必要になりますが、これでは現実的ではありません。
        開発したソフトの「ファイル管理の手法」は こちら

 さて、ソフトが完成したので、ある会社に納入することになりました。ところがその会社の社長は「導入しても誰も使わなければ困る」と、煮え切りません。
 私は「余程リーダーシップがないのかな」とも思ったのですが、とりあえず、導入前に社員のコンセンサスを得るためのセミナーをしましょうということになりました。

 セミナー当日に会議室に入ると、そこにはやる気が伝わってくるような若い男女が20名ほどいました。
 皆シーンとしているのですが、「ファイルはしっかり整理している!」とか、「何でそんなものを使う必要があるんだ!」と、いった不満が聞こえてきそうな最悪の雰囲気です。
 この不満は、いったいどこから来るのかと考えた際に、それまで分からなかった、「ファイルの管理が上手くできないもう一つの理由」を理解しました。

 そこで、次の言葉に繋げました。
 「皆さんの表情から、そんなもの使わなくてもしっかりやっている、といった声が聞こえて来そうですが、その不満もファイルを整理する上で必要なことですので、それを踏まえて話を進めたいと思います。
 皆さんはご存知かもしれませんが、「会社」と辞書を引くと「利益を得るための集合体」とあります。
 会社は利益を出すことが目的で、皆さんはそのために働いていて、社長はそのリーダーということになります。
 今回社長は、ファイルを整理して効率化しようと考えたわけです。
 その判断に、みなさんは賛同しかねているように見受けられますが、私はどこか違和感を覚えます。
 「ファイルを整理して業務の効率化につなげよう」という、社長の判断が間違っていると皆さんは考えているのでしょうか。それとも、「判断は間違っていないがやりたくない」ということなのでしょうか。
 この部屋に入った時に、みなさん一人一人がやる気ある方が集まっていると感じました。
 そのため、もしも社長が、「書類を探すのに手間がかかっているので、書庫に整理して効率化しよう」といった場合には、皆さんは「イエッサー!」と、積極的に行動する人達に思えるのです。

 そうなると、ファイルは書類が姿を変えたものであり、同じ情報を持つものですので、「書類の整理は良いが、ファイルは駄目」と、なる理由を理解できないのです。どなたか説明できる方はいらっしゃるでしょうか。」

 誰も意見を述べず、皆シーンとしている状態が続きました。
 私の考えた反発の理由は、「パソコンは個人で管理するもの」という、彼らが持つパソコンの運用ルールが邪魔をしているというものです。
 社内のファイルを整理することは共同作業に当たります。そのため彼らにとっては、それを強いられるのは「考えられないこと」であり、「パソコンを知らない人の発想」としか、思えなかったのです。

 私はそれまで、ファイルを上手く管理できないのは、共有フォルダの形状にあると考えていました。
 しかしそれだけではなかったのです。ファイルの整理という共同作業に対するコンセンサスも必要だったのです。それを早くから見抜いていた社長には、脱帽すべきだったのです。
 人が信じていることを変えるのは容易ではありませんが、コンセンサスを得る必要から以下のような話をしました。

 「パソコンはご存知の通り、個人向けのコンピューターとして登場しました。しかし安価でパフォーマンスが良いことから、組織でも用いられるようになったものです。
 パソコンの運用ルールには、「人のパソコンを勝手に操作してはいけない」といったものもありますが、これらはパソコンを自宅で使う際の、プライベートな使い方であることをご存知でしょうか。個人向けのパソコンを組織で流用する際に、一緒に使い方も流用したものです。
 しかし、組織は共同作業が一般的ですので、パソコンの個人管理的な使い方は業務に合わないのです。

 これらは、よく考えると、おかしなルールであることが分かります。
 パソコンには個人情報や製造ノウハウなどの重要な情報が入ります。
 これを、役職も職責も関係なく、パソコンを使っているというだけで、「全権を一任する」というのはおかしなことです。
 会社側が異を唱えない現状は、「これを会社方針とする」と、社長が述べているようなもので、仮にパソコン使用者が顧客情報や製造ノウハウを売却した場合でも、方針に沿っていることになってしまいます。
 また、「人のパソコンを勝手に操作してはいけない」と言いますが、パソコンは職場の経費で業務を効率化するために購入したものですので、そこに見られては困るようなデータがはいっているとしたら、そちらの方が問題なのです。」と、肉付けしながら続けました。

 セミナーの続きはどうなったかですが、話が進むうちに、彼らは現状のパソコン運用の問題点を理解するようになり、仕事の仕方を変えた方が良いと、自発的に考えるようになりました。
 それから、数年経って訪問すると、フロントの女性が、「同僚が急に欠勤しても、私たちがバックアップできる体制になっています」と、ファイル情報の共有が円滑に行えていることを教えてくれました。

 みなさんが、もしも従来の運用ルールを適用しているとしたら、見直すべきだというのが、私の経験した「ちょっとした知恵」です。

 本当に、ちょっとしたことでパソコンの運用が効率化すると思われるのですが、パソコンの運用方法は定着していますし、一般常識といってもよいものですから、なかなか変更できるものではないと思います。
 ただ、「運用方法を業務が変えれば効率化する」というのは、確信をもって言えることから、それに役立つならと、この度、弊社の本の形をしたファイルソフトKami技を無償で提供することにしたものです。